基質(基準)レベルのリン酸化と酸化的リン酸化(電子伝達系)
基質(基準)レベルのリン酸化
基質レベルのリン酸化とは、リン酸を持つ基質(高エネルギー化合物)のリン酸が酵素の働きによって、ADP(アデノシン三リン酸)に移されることでATPが生じる反応のことをいいます。
基質とは、解糖系では1,3ビスホスホグリセリン酸やホスホエノールピルビン酸などを指します。
この反応では酸素を必要としないため、酸化的リン酸化と機序が大きく異なります。
基質レベルのリン酸化 例▼
解糖系
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酸化的リン酸化(電子伝達系)
酸化的リン酸化とは、基質の酸化(電子を失う反応)によってATPを産生する反応で、ミトコンドリア内膜で電子伝達系(呼吸鎖)と呼ばれる経路で行われます。
体内の95%以上のATPは電子伝達系でまかなわれています。
電子伝達系は主に、電子伝達複合体T、U、V、WとコエンザイムQ(ユビキノン)、シトクロム、ATP合成酵素(複合体X)で構成されており、解糖系やクエン酸回路から供給されたNADHとFADH2を使用し、酸化的リン酸化によってATPを産生します。
NADHは、二つの電子(e-)を放出し、その電子は複合体T、CoQ、シトクロムc、V、Wの順に渡されていきます。
※FADHはFADH2⇒U⇒CoQ⇒V⇒シトクロムc⇒Wの順
それと同時にそれぞれの複合体はマトリックス領域から膜間腔へH+(プロトン)を汲み出していきます。
この電子の流れとH+(プロトン)を汲みだす一連の流れを電子伝達系といいます。
そして電子伝達系の働きによって、膜間腔のH+(プロトン)は増加(高濃度)、マトリックス内のH+(プロトン)は減少(低濃度)します。
そのH+(プロトン)の濃度差が生じると、高濃度の領域から低濃度の領域へ戻ろうします。
その濃度勾配によるエネルギー(自然に戻ろうするエネルギー)を利用し、ATP合成酵素(複合体X)が働いてADPとリン酸(Pi)からATPが生成されます。
この電子伝達系によるNADHなどの基質の酸化を利用し、ADPをリン酸化してATPを生成する過程を酸化的リン酸化と呼びます。
酸化的リン酸化で得られるATP
NADH1分子⇒3ATP
FADH21分子⇒2ATP
補足:解糖系から供給されるNADHなどはミトコンドリア内膜を通過できないため、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルやグリセロール3-リン酸シャトルなどの機構をりようしなければいけません。
電子伝達系 経路図