在宅訪問管理栄養士の仕事内容と資格

在宅訪問管理栄養士の仕事内容と資格

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最近では通院が困難となった高齢者が在宅医療を利用していることも多く、在宅訪問が主な業務内容の管理栄養士求人も増えてきました。患者の自宅に訪問し栄養士単体で栄養指導・管理を行う(医師の指示のもと)こともあれば、医師や言語聴覚士など多職種と協議しながら計画を立てることもあります。

 

また栄養士会が認定している【在宅訪問管理栄養士】の認定資格もあります。ただし、現状の登録者数は1,160人(2021年度末時点)と少なく、これからが期待されている分野です。在宅での栄養管理を行ってみたいという管理栄養士も多いので、実際の求人や資格の詳細などを解説します。

 

在宅訪問栄養指導に関する制度

在宅患者に対する栄養指導・管理に関しては、医療保険と介護保険それぞれ異なる制度があります。違いは実施内容や管理栄養士の所属場所などです。介護保険に関しては「居宅療養管理指導」という介護保険のサービスの一環で行われ、実際は在宅訪問栄養指導とは呼びません。医療保険では医療機関が提供するサービスであり、医師と同機関に所属する管理栄養士でなければいけません。

 

在宅訪問指導の制度

医療保険 介護保険
サービスを提供する機関

医療機関
在宅患者訪問栄養食事指導

病院、診療所、薬局
居宅療養管理指導

管理栄養士の所属場所 当確医療機関の医師と同じ所属 外部委託も可能
患者の生活条件、し好等を勘案した食品構成に基づく食事計画案又は具体的な献立等を示した栄養食事指導箋を患者又はその家族等に対して交付するとともに、当該指導箋に従い、食事の用意や摂取等に関する具体的な指導を 30 分以上行う

計画的な医学的管理を行っている医師の指示に基づき、栄養管理に係る情報提供及び指
導又は助言を30分以上行う

在宅訪問管理栄養士の仕事内容と役割

医療保険と介護保険で名称は異なりますが、どちらも在宅訪問での栄養指導は月に算定が2回まで、1回につき30分以上行います。ただし、対象となる疾患は若干異なり医療保険の方が退所数が多いです。食欲や栄養状態に嚥下咀嚼機能の評価などを行い、栄養ケア計画書を作成、評価や栄養管理目標の見直しなどを定期的に行います。

 

管理栄養士のみで、患者の自宅にいき指導を行う場合と医師や看護師、リハ職など多職種でNST(加算なし)栄養サポートを行うことがあります。そのため、後者の場合知識や経験もある程度医療機関で培っておかなければ難しいでしょう。また指導内容は医療機関などで行う以上に、対象者の生活に寄り添ったものとなります。食事を用意する家族に対して患者の自宅で調理デモをしたり、スーパーやコンビニで買えるものだけで調節できるように指導したりします。

 

対象となる疾患

介護保険 医療保険
  • 腎臓病食
  • 肝臓病食
  • 糖尿病食
  • 胃潰瘍食
  • 貧血食
  • 膵臓病食
  • 貧血食
  • 脂質異常症食
  • 痛風食
  • 嚥下困難者のため流動食
  • 経管栄養のための濃厚流動食及び特別な場合の検査食
  • 心臓疾患等の患者に対する減塩食
  • 十二指腸潰瘍の患者に対する潰瘍食
  • 侵襲の大きな消化管手術後の患者に対する潰瘍食
  • クローン病及び潰瘍性大腸炎により腸管の機能が低下している患者に対する低残渣食
  • 高度肥満食
  • 高血圧の患者に対する減塩食(ただし、一日の摂取塩分量は6g未満)
  • 経管栄養のための流動食、嚥下困難者のための流動食、低栄養状態
  • 腎臓病食
  • 肝臓病食
  • 糖尿病食
  • 胃潰瘍食
  • 貧血食
  • 膵臓病食
  • 貧血食
  • 脂質異常症食
  • 痛風食
  • 嚥下困難者のため流動食
  • 経管栄養のための濃厚流動食及び特別な場合の検査食
  • 心臓疾患等の患者に対する減塩食
  • 十二指腸潰瘍の患者に対する潰瘍食
  • 侵襲の大きな消化管手術後の患者に対する潰瘍食
  • クローン病及び潰瘍性大腸炎により腸管の機能が低下している患者に対する低残渣食
  • 高度肥満食
  • 高血圧の患者に対する減塩食(ただし、一日の摂取塩分量は6g未満)
  • フェニールケトン尿症
  • 楓糖尿病食
  • ホモシスチジン尿症食
  • ガラクトース血症食
  • 治療乳
  • 無菌食
  • がん患者、摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者又は低栄養状態にある患者

在宅訪問管理栄養士の求人はあるの?

令和5年3月の時点では、少ないですが医療機関の在宅訪問指導メインの求人がいくつか確認できました。基本的にはクリニックでの採用が多く、グループ法人の場合は訪問診療を取り扱う企業での採用となることもあるようです。求人自体は少なくフリーランスや法人単位で行っている管理栄養士が多い印象です。
※職場によってはドライバーがついているので免許が必要ではないところもあれば、自分で運転が必要な場合があります。

 

求人@訪問診療の企業にて管理栄養士(大阪)

関西全域にクリニック等、医療法人を取りまとめている企業での採用求人です。大阪全域で業務がありますが、管理栄養士は調査時点で3名所属しています。応募資格はそこまで厳しくなく、研修や土日に勉強会などに参加した場合は平日に代休が取れるなど、勉強させてくれる環境が整っている印象でした。

給与:月給 220,000円?
勤務時間:9:00〜17:30(実働7.5時間) *平均残業時間:10〜15時間程
応募資格:管理栄養士としての実務経験2年〜、訪問指導未経験可
仕事内容
・施設(老人ホーム等)、居宅への訪問栄養指導
・言語聴覚士と歯科医と連携した摂食嚥下チーム、在宅NSTチーム活動

 

求人A在宅医療専門のクリニック(東京)

2022年に開業したばかりの在宅医療をメインとしたクリニックでの管理栄養士採用です。そのためか、固定残業代ついており、残業が20時間以内は給与が変わりません。若干不安のある雇用ですが、日勤帯勤務で土日祝休みなのは栄養士業界では少ないので貴重な求人です。

給与:月給 220,000円?※固定残業代20時間、賞与あり

 

勤務時間:9:00~18:00(実働8時間) *平均残業時間:ほぼなし
応募資格:未経験可
仕事内容
・施設(老人ホーム等)、居宅への訪問栄養指導
医師、看護師のフォロー、カルテ入力、SNS等での発信
・その他 チーム医療としてのバックオフィス業務
・運転

在宅訪問栄養指導ができる職場は少ない?|フリーランスの管理栄養士が多い理由

管理栄養士が行う在宅訪問での栄養指導は通院困難者の増加により需要は高いものの、実際に行っている事業所は少ないです。その理由として、

1.薬局などでは算定不可(医療保険・介護保険共に)
2.医療機関などに所属している管理栄養士の人員不足
3.多職種からの理解不足

等が挙げられます。

 

1.薬局などでは算定不可(医療保険・介護保険共に)
2019年頃までは、居宅療養管理指導の範囲で管理栄養士が薬局でも算定ができる地域がありましたが2020年に算定できないことが全国で統一されました。※令和6年には再度、算定できるかどうか見直しが行われるそうです。

 

これまで算定できる地域の薬局に所属する管理栄養士もいましたが、加算が取れなくなったため患者が実費負担で支払をする必要がでてきました。その場合、負担額を増やすわけにもいかないため企業としては赤字になってしまいます。在宅訪問をする栄養士が増えない一因でもあります。

 

2.医療機関に所属している管理栄養士の人員不足
医療機関や介護保険施設に所属する管理栄養士であれば、それぞれ医療保険・介護保険に伴って算定できます。しかし、在宅訪問を行うには職場での通常業務に支障が出ない人員が必要になってきます。

 

在宅訪問では移動時間や患者家族の都合に日程を合わせる必要もあり、固定された勤務をしている管理栄養士には難しい現状があります。病院によっては稼働しているところもあるようですが、現実的には少ないようです。

 

3.多職種からの理解不足
訪問看護やリハなどを行っている多職種からの理解が不足していることも原因として考えられます。現場では看護師が訪問看護のついでに食事指導を行っているケースも多いようで、管理栄養士が必要と思われていないことがあります。

 

近年、医療機関では専門的な知識・経験を有する管理栄養士も増え医療従事者としての認識も広まってはいますが、在宅訪問の現場では行っている管理栄養士の総数自体も少ないために認知度が低いと考えらます。

 

在宅訪問を行っている管理栄養士にはフリーランスが多い?

地域ケアステーションにおいてもクリニックや診療所にフリーの管理栄養士を派遣する形で算定を取ることができます。病院や介護施設に所属する管理栄養士でも地域ケアステーションに登録できますが、正規雇用では時間的に難しいでしょう。そのため必然的にフリーの管理栄養士と契約し、在宅訪問を行っているところが多くなっているようです。

 

また保険料の算定をせずに患者の実費負担で栄養指導を行っているフリーランスの管理栄養士もいます。その場合は自身で設定した金額で、指導を行うようです。診療所やクリニックなどと契約して継続的に行う場合もあるようです。

 

在宅訪問管理栄養士に必要なスキル

1.病態・疾患の知識
急性期病院ほど病態や疾患の知識は必要ないですが、最低限基礎的な臨床栄養の知識がなければ生活や病歴から栄養学的な問題の解決をするのは難しいでしょう。ある程度は臨床経験を積み、どのような課題があるのか見極める力が必要になります。

 

2.調理スキル
在宅訪問指導を行う際に、指導の一環として行うのが調理です。食事の問題点を把握し、必要に応じて患者やその家族の家で調理実習をする必要があります。医療機関で働いている場合は、献立を参考に作ることもあるので実際に再現できるだけの調理スキルが必要になってきます。

 

3.コミュニケーション能力
現状、医療機関などの臨床現場の管理栄養士ほど認知されていないため、自身で活動の場を広げていく必要がある在宅訪問指導の現場。ケアマネや看護師に医師とリハ職種など、様々な職種と自分から関わっていけるだけのコミュニケーション能力が重要になります。

 

また基本的には患者の自宅で行うため、相手の懐にどれだけ踏み込めるかも大切です。食環境や生活をできるだけ深堀し、適切な栄養指導を行うためです。時には冷蔵庫の中身を見せてもらうなど対象者のテリトリーに入ることもあります。

栄養士会が認定している【在宅訪問管理栄養士】になる方法

在宅訪問管理栄養士は日本栄養士会と日本在宅栄養管理学会が認定している制度で、在委託医療において多職種との連携や在宅療養者への適切な指導ができる管理栄養士を育成することを目標としています。在宅訪問管理栄養士に認定されるためには、管理栄養士取得後最低でも5年以上立っていなければいけません。

 

下記認定方法に沿って、認定試験と症例レポートの審査に合格して初めて在宅訪問管理栄養士として認定されます。他認定資格と異なり、加算の算定には関係しないため、あくまで個人のスキルアップを目標として取得している人が多いようです。

 

在宅訪問管理栄養士に必要な条件

公益社団法人日本栄養士会の会員であり、一般社団法人日本在宅栄養管理学会の正会員で“管理栄養士”であること。
管理栄養士登録から5年以上経過し、病院・診療所・高齢者施設等※において管理栄養士として従事した日数が通算で900日(週休2日と仮定して、3年6ヶ月以上の期間が必要です)以上の者。
※「病院・診療所・高齢者施設等」の対象となる施設一覧はこちら
学習プログラムの所定の内容を全て修了し、所定の認定試験に合格後、在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポート審査を受け合格した者。

引用:一般社団法人日本在宅栄養管理学会

 

認定者数
在宅訪問管理栄養士に認定されているのはは全国で1,160人となっています。都道府県あたりは24.6人程度と少ないといえるでしょう。2017年の時点では認定者数684人だったので年間に119人が認定を受けていることになります。

 

在宅訪問管理栄養士認定の流れ

  • STEP
    日本在宅栄養管理学会申込み・入金

    受講料の支払い・IDパスワード郵送

  • STEP
    インターネットカレッジの受講

    前学習と確認テスト/ファーストステップ学習

  • STEP
    セカンドステップ学習・認定試験受験申込み
  • STEP
    ワークショップ・認定試験

    セカンドステップ学習 + 認定試験実施

  • STEP
    セカンドステップ学習修了・認定試験合格
  • STEP
    レポート提出

    在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポート提出

 

認定に必要な費用

認定を受けるために必要な費用は学習費用や受験料など合計で56,500〜65,500円です。学会の会員であれば9,000円安くなります。

 

費用内訳

  •  学習受講料

  学会会員 34,500円
  非会員 43,500円

  • 認定試験受験料:11,000円
  • 認定証交付料:11,000円
  • 認定更新料:7,700円(消費税別途)※5年ごと更新