特定保健指導員として働く管理栄養士の仕事内容

特定保健指導員として働く管理栄養士の仕事内容

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最近では健診業務を受託する企業も増え、特定保健指導を行う管理栄養士も多くなってきました。しかし、特定保健指導の正社員求人は少なく、個人に対する業務委託となっていることがほとんどです。そのため、管理栄養士の場合フリーランスや副業として行っている人が圧倒的に大多数を占めています。

 

また2020年以降は情勢の変化もあり、完全在宅で行える保健指導も増えています。以前よりも管理栄養士が気軽にできるようになり、SNSなどでも副業として行っている人が増えてきた印象です。実際にあった求人や仕事内容などを解説しているので、特定保健指導に興味のある管理栄養士は参考にしてください。

 

特定保健指導とは?

特定保健指導とは、いわゆるメタボに着目した健診で診断を受けた方に対して行う指導のことで、運動習慣や食生活などの生活習慣病の予防・改善を目的として行います。対象となるのは40歳から74歳の医療保険加入者で、医師・保健師・管理栄養士だけが指導することができます。

 

その健診で診断対象者は年間50万人以上の方がいますが、保健指導の実施率は20%前後とあまり多くはありません。あくまで病気と診断されたわけではないため積極的に受ける人が少ないことが原因といわれています。

 

特定健診と指導のリスク判定と支援・指導内容

特定健診は腹囲やBMIをステップ1として判定し、血液検査の結果によりステップ2で追加のリスク判定を行います。ステップ3で対象者の階層化を行い、それぞれリスクの数によって支援内容が決められます。3か月間を目途に支援を行い実績を評価します。

 

支援内容

3カ月以上 積極的支援 動機づけ支援

面接による支援
個別支援20分以上 または グループ支援80分以上
(1グループはおおむね8名以下とする)

方法:電話やメール、手紙などで積極的な支援を行う

行動変容の必要性を実感できるように実践可能な具体的な行動目標を立てる。

定期的・継続的に支援し、取組の工夫の確認や強化、また、継続ができていない場合はその理由の確認や目標の見直しを行う。

方法:対象者自身で「行動目標」にそって生活習慣を改善。

3か月以上の継続的な支援後に評
価を行う

原則 1 回の支援を行い、3か月以上経過後に評価

特定保健指導を行う管理栄養士の役割

特定保健指導を行えるのは管理栄養士・医師・保健師のみに限定されています。特定健診・指導の目的は「生活習慣病の改善・予防」にあるため、食生活、運動といった分野に特化した管理栄養士が求められているのです。

 

保健指導の場合、医療行為を行うことがないため資格による業務の差はありません。ある程度は決まったマニュアルの範囲内(標準的な健診・保険指導プログラム※3)で行うのが基本です。
ただし、食といった分野のスペシャリストである管理栄養士としては腕の見せ所になるでしょう。

特定保健指導に求められるスキルとは?

病院や施設で栄養指導するよりも、ある意味難しいといわれている保健指導。というのも、対象者によっては病名の診断をされる前の状態で指導を受けるためあまり積極的に話を聞いてくれないといったパターンが多いです。また国から受託されている企業が行うことが多いため、医療現場などとはやや異なるスキルが必要とされます。

 

@コミュニケーションスキルと営業力

業務委託で仕事を受けている場合は少ないようですが、正社員や契約する企業によっては自分で対象者へのアポ取りが必要になることがあります。メールやアプリでもできるみたいですが、電話でのアポ取りが多く、営業力に近いコミュニケーションスキルが必要になってきます。また病気として診断されていない方への指導は、重大性の認知も低いため難しいといわれています。年齢も比較的若い方が多く、行動変容を促すには質の高い指導・コーチングスキルが必要です。

 

Aビジネススキル

特定健診・保健指導を行っている病院もありますが、ほとんどは国から受託された企業と業務契約を結び業務を行うため最低限のビジネススキルが必要とされます。電話で話し方やビジネスメール、正社員の場合なら対面での名刺交換などマナー的なスキルやWord・ExcelなどのPCスキルも必要になってきます。

 

Bマルチタスク(事務処理など)

基本的に1人で業務を行うことが多く、事務作業も多いためマルチタスクに業務を行う必要があります。対象者に合わせて行う必要があるので時間・日程の管理をしっかりと行い、指導報告書の作成や資料作りなど様々なタスクを効率よくこなさなければなりません。


栄養士会認定の特定保健指導担当管理栄養士になるには?

特定保健指導担当管理栄養士は、保健指導担当者研修会の修了者かつ一定以上の脂質と活動実績を備えた管理栄養士に対して栄養士会が認定している資格です。研修会と資格の取得条件は下記の通りです。

 

保健指導担当者研修会詳細※2022年開催

主催:日本栄養士会
内容:講義(保健指導全般・指導できる能力)※eラーニング配信
   演習(初回面談演習・グループワークなど)※ZOOMによるライブ配信
受験資格:受講資格特定保健指導を担当する管理栄養士(保健指導経験年数1〜2年目)
費用:66,000円(税込)(日本栄養士会会員割引価格22,000円(税込))
2022年度保健指導担当者研修会<初任者研修>オンライン

 

※2022年度保健指導担当者研修会より一部抜粋|公益財団法人日本栄養士会

保健指導担当者研修会終了後に下記の条件を満たしていることが取得条件となります。「自己研鑽をしていること」とやや曖昧な条件ですが、栄養士会を通じて別途講習会などに自主的に参加しておけばいいようです。しかし、その基準は公表されておらず、ある程度は積極的に参加しなければもらえないという意味あいかと思われます。

 

また医師や保健師に関しては、未経験でも担当者研修会を受けることができますが、管理栄養士は最低でも1年以上経験がある人しか受けることができません。条件がなかなか厳しいこともあってか、未だ認定者は全国で153人しかいません。

 

実践事例報告や活動概要に関しては特定保健指導担当管理栄養士認定審査事例報告書という様式に記入すればいいようで、そこまでややこしくありません。保健指導経験が3年以上ある方は取得を検討してみてはいかがでしょうか。

 

審査に必要な申請資格

日本国の管理栄養士の免許を有していること
3年以上特定保健指導に従事していること
日本栄養士会生涯教育制度に参加し、自己研鑽をしていること
日本栄養士会および都道府県栄養士会が実施する「保健指導担当者研修会(2018年度以降)」を修了していること
特定保健指導に関する実践事例報告(3事例相当)および活動概要(活動実績)を提出すること
出典:日本栄養士会|特定保健指導担当管理栄養士

特定保健指導を行う管理栄養士の仕事内容と求人

特定保健指導といっても、指導だけではなく各種書類の作成やセミナーの開催、資料作りなど雇用形態によっても様々です。実際の求人を例に管理栄養士が行う仕事内容をご紹介します。

 

 

正社員又は契約社員(企業採用)

保健指導の多くは国から受託された企業が行っていることがほとんどで、正社員求人も少なからずあります。今回はハロワ・エイチエに掲載していた求人をご紹介します。

 

業務内容例

指導業務

・特定保健指導の個別対応

・セミナーの開催

・初回面談、継続支援の電話支援等

・支援状況の記録、入力作業

訪問健康支援業務

・生活状況、受診状況確認等

・検診受診勧奨

介護予防教室運営業務

・運動補助

・アセスメント、問診等

正社員求人の場合、固定された業務というよりはクライアント(健保や医療機関)の依頼によって仕事内容も幅広くなるようです。そもそもフルタイムの求人は少ないですが、比較的高給で土日祝日休みの求人が多い印象でした。

 

正社員(医療法人)

正社員に関しては企業よりも人間ドッグや健診センターをもつ医療法人の方が求人が多い傾向にあります。※ハローワーク求人より

・保健指導業務全般

・人間ドック健康相談

・受診者向けセミナー等

・健診センター内での、健診受診者に対する栄養指導や特定保健指導

・健診センター内での事務業務全般

・データ入力

・受付、電話応対

 

業務委託

保健指導の大半は業務委託で、1件当たり〜円といった報酬制になることが多いです。電話やメール、対面かWEBでの指導など業務内容によっても報酬額が異なり、対面指導が最も高額になります。
報酬額一例(1件あたり)

一括面談(1日・事業所内など):10,000円〜14,716円(税抜)
個別指導(訪問・対面):4,286円〜5,239円(税抜)
電話での支援:1,000円〜1,429円(税抜)※電話代は基本的に企業が負担
オンラインでの指導・支援:1,500円〜1,691円(税抜)

企業によっても異なりますが、オンラインでの指導や支援に関しては報酬が低額になることがほとんどです。稼ぎたいのであれば、対面指導を主に行うと効率がいいかと思います。

特定保健指導員の正社員になるには?|給料も紹介

管理栄養士で指導員のほとんどが業務委託の中、正社員求人も少なからず存在します。中には基本給が20万円〜、賞与ありなど高給求人もあり、病院や施設と比較すると給与や休日といった待遇がいいことも多いです。ハローワークにも保健指導の求人は多少ありますが、ほとんどは健診センターのある一般的な総合病院です。そのため通常の病院業務に+αで保健指導をするような業務内容になるのであまりおすすめしません。

 

土日祝休みの企業求人が多いのはエイチエの転職サービスである栄養士人材バンクです。最近では優良求人が増え、人気がありますが実際に高給で休日数の多い求人も多いです。下記、実際に私が住んでいる地域で見つけた求人です。

 

実際にあった求人の募集内容

業務内容:特定保健指導、クライアント先でのセミナー開催など
給与:月給22万〜(基本給20万)+住宅手当など
休日:120〜125日 完全土日祝固定

 

またエイチエを運営している株式会社エス・エム・エスも特定保健指導の部門があり、その求人も掲載されています。もし正社員の特定保健指導員に興味があれば、30秒で登録できるので栄養士人材バンクに登録して相談してみましょう。


標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】

 

2022年度保健指導担当者研修会<初任者研修〉|公益財団法人日本栄養士会
https://www.dietitian.or.jp/apps_web2/training/detail/4314/